女を商売にしようと思ったのは学生時代のことだった
親元を飛び出し、どうしても一人で生きていかなければならなくなったオレが、ふと思いついた商売・・・、手っ取り早く稼ぐには水商売が一番いいだろうと思ったのだった。そうして始めたのがホスト稼業。 最初は大学を卒業するための手段としてやっていたのだが、そのうちオレは、その仕事に没頭していくことになった。 もともとオレは、こんな世界とは無縁の家庭で生まれ育った 教育者の両親を持ち、人並み以上の教育を受け、来る日も来る日も勉強に明け暮れたオレは、一流と呼ばれる大学にも入学した。 他人には、何の不満もなさそうな、絵に描いたような優等生に見えたに違いない。 だが何かが違っていた。 平凡で安定した生活を望む両親、 くだらないエリート意識を振りかざす同級生、退屈な学生生活・・・ そんなもの全てに疑問を持ったとき、オレは家を飛び出していた。 最初に始めたホストという商売 まだ何も知らないひよっこだったオレは夢中になった その店の店長だったMの「お前、素質あるねえいいセンスしてるよ」という言葉も拍車をかけた。 どうすれば売り上げを伸ばせるか、どうすればもっと指名をとれるか・・・ オレは仕事に熱中した。 店長のMも、そんなオレのどこが気に入ったんだかは知らないが、この世界のことをいろいろ教えてくれた。 競争の激しいこの世界で生き残る。 こうしてホスト稼業に精を出したオレだが、もともとこの商売、長く続けられるものではない。 人気稼業は飽きられるのも早い。 それに気がついたとき、オレはホストをやめた。 いつまでもこの仕事にしがみつき、乞食のように他人のおこぼれをもらうのはごめんだった。 そんなことは頭の悪い奴のすることだオレは商売を変えた。 「使われる側から使う側へ」・・・ テーマはこれだった。 もちろん苦労した。 金、セックス、権力・・・ 人間の欲望の吹き溜まりのようなこの世界 平気で嘘をつく奴、人の足を引っ張る奴・・・ 金のためなら悪魔にも魂を売るという奴らばかりの世界だった金をごまかされたり、信じていた奴からも裏切られたり・・・だが、そうしたトラブルがおこるたびに、オレは利口になっていった。 この世界で生きていくためのノウハウを学んだのだ。 「女衒株式会社」・・・ フーゾク業界を中心にしたコンサルティング業務最終的に出した結論がこれだった。 虎狼のように生きる・・・ それがオレの生き方だ。 細心の注意をはらって獲物に近づきそして物にする。 自分の食う分を確保したら、他には手を出さない。 少しでも長くこの仕事を続けるためには、そうするしかないのだ。 目先の欲にとらわれて失敗した奴は多い。 オレはそんなことのないよう、いつも獣のように神経を研がらしている。 明日のない商売だからこそ、なんとか明日を見いだすために・・・・・・。